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(教育)
「ガクちゃん先生」こと秋田市立秋田西中学校の      
三戸学(さんのへ・まなぶ)教諭執筆コラム    
「利き手を負傷/隠れた才能開花?不便楽しむ」

 

朝日新聞秋田版紙上で秋田市立秋田西中学校の三戸学教諭がコラムを連載しています。 以下は6月16日掲載分です。

 19日から21日までの3日間、秋田市中学校総合体育大会(中総体)が開かれます。秋田西中では、7日から2週間の部活動強化期間に入りました。生徒たちは部活動の練習と応援練習に熱が入ります。中学生の「夏」到来です。その強化期間中に利き手の左手首を負傷してしまいました。
 今年度、男女卓球部の部長を務めています。9日の部活中、監督から「土手ラン(グラウンドの外周)4周」と指示を受けた1年男子生徒が、「センセイ、一緒に走ろう」と誘ってきました。
 ”生徒と一緒に”を教育目標に掲げている僕にとって、ありのままの姿を見せることのできる絶好のチャンス。電動車いすを使わず、その生徒と一緒に走りました。生徒は「センセイ、ゆっくり走ろう」と、張り切る僕をセーブしてくれました。グラウンドで練習中の生徒からも「ガンバレ、ガクちゃん先生」。声援を受けて、1週約600メートルの外周を4周完走することができました。
 けがをしたのはその後のことでした。別の1年生の男子生徒から再び土手ランに誘われました。僕は4周走ったばかりだったので、「電動車いすでならいいよ」と答えました。生徒は自分のペースで土手ランをし、僕は電動車いすで土手(桜並木に面した道路)を歩いていました。その時、対向車が来て、よけようとしたら、電動車いすごと、土手から落ちました。
 約3メートル下のグラウンドの側溝に頭と左手首を打ちました。頭から軽い出血。意識はしっかりしていました。男性職員の車で市内の病院に行き、手当てしてもらいました。左手首のレントゲンを撮ったら、骨には異常なし。翌朝、左手首の断層写真を撮りましたが、手首の骨は複雑に入り組んでいるので、診察が難しいとのこと。動かすと、痛みを感じるので、ギプスで固定しました。電動車いすは無事でした。
 利き手の左手を使えなくなり、不便を感じています。しばらくの間、食事は右手でとることになります。おにぎりなどは楽ですが、食器は動くので、左手を添えて、固定しないといけません。スプーン・フォークの扱いも、右手は慣れてないので、こぼします。顔を洗うときも、右手でタオルを絞らなければならず、もっと握力を鍛えておくべきだったと後悔しています。顔をふくのも1人ではできません。
 時々「障害があるって、不便でしょう」と質問を受けます。「ビールをストローで飲むと、酔うでしょう」と言われても、ストロー以外で、ビールを飲んだことがないので、何とも言えないのと同じように、これが僕の体なので不便を感じていません。ただし、今回のように、使えていた左手が突然使えなくなると、不便さを感じます。しかし、『けがの功名』で、完治するまで不便さを楽しみたいと思います。ひょっとすると、隠れた才能が開花するかもしれません。

朝日新聞秋田版 6/16)




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