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(福祉サービス)
[秋田人に問う] 介護保険/将来像示して欲しい     
   能代市福祉活動専門員 安部美恵子(あべ・みえこ)さん語る

 能代市社協職員で、87年から日本ソーシャルワーカー協会正会員の阿部美恵子さんが朝日新聞(6月29日)の「秋田人に問う」で介護保険制度についてインタビューに答えています。 

 介護保険は4年前、お年寄りが地域で暮らせる「在宅」の福祉を目指して始まった制度だった。今、本当に在宅が主役になっているかといえば、それは違う。例えば、中間施設は本来、要介護度が低い人が、リハビリ目的で通う機能があるが、最近は要介護度4とか5とか重い人の滞在型利用が増えている。
 理由は、お金の問題と関係している。在宅で1日5時間程度の訪問介護を受けるとすると、ヘルパーや紙おむつの費用などで1カ月に約6万円かかる。一方、短期入所施設を利用した場合もかかる金額はほぼ同じ。在宅の場合、別に食費もかかることを考えると、24時間面倒をみてもらえる施設の方が断然安く、家族にとっても都合がいい。
 また、県内には多くのデイサービス施設があるが、理学療法士や作業療法士がいない施設が多く、単なるお年寄りのレクリエーションや息抜きの場になっている。リハビリに力を入れられるように理学療法士や作業療法士を置くべきだ。
 介護保険の目玉は介護のノーマライゼーション(平等化)のはずだったが、経済力の差が受けられるサービスの差につながっている。知り合いの老夫婦の場合、老齢年金だけで暮らしており月収は約10万円。妻が要介護度5の寝たきりになったが、標準的な1カ月約3万5千円の介護費用を払うと暮らしていけない。仕方なく「1万円でできるケアプランにしてほしい」となった。利用者一人ひとりにあったケアプランを立てて、それを実践できているとは、とても思えない。ケアプランナーも悩んでいる。
 最近、未熟なヘルパーによる介護事故が増えているが、ヘルパーの急増と関係している。私もヘルパーを送り出す側だが、人材育成とモラルの向上が課題だ。痴呆(ち・ほう)に対する見識も足りない。介護認定の2次審査をする医師を含めてそう言える。ボケをどう認定するのかという4年前に心配された問題が解決していない。
 介護が在宅ではなく施設志向になり、行政が支払う介護費用も膨らんでいる。このままいけば介護保険が破綻(は・たん)する可能性がある。介護に対する若者の関心は低いが、保険料負担を20歳以上に広げるという意見には賛成だ。ただ介護の将来像を国民にきちんと示してほしい。
 
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介護保険を巡る動き 

 介護保険制度は05年に最初の改正時期を迎える。厚労省は1月、介護制度改革本部を作り、05年通常国会への改正案提出を目指して見直し作業を始めました。
 介護保険制度が始まった00年度から03年度までに利用者は約2倍に増え、制度は浸透した。一方でサービスを給付する費用も毎年10%のペースで伸び続けており、保険財政の先行きが懸念されています。このため国は給付額を抑えるために、現在1割の自己負担の引き上げを検討しているが、利用者や介護の現場から強い反発がある。また、保険料収入を増やすため、現在40歳以上としている対象年齢を20歳以上に引き下げる方向で検討が進んでいます。
 一方、身体・知的障害者を対象にした障害者支援費制度が、利用者の増大で大幅な補助金不足が生じており、厚労省は障害者福祉と介護保険制度の統合に向けた議論を始めています。
(朝日新聞秋田県版 地域欄 6/29)




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